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再生医療で使う細胞をどうやって数える? 細胞計測技術の基本

Tags: 再生医療, 細胞計測, 細胞培養, 品質管理, 技術解説

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この分野に関心をお持ちの皆様にとって、再生医療は細胞を使って失われた組織や臓器の機能を回復させる医療である、ということはすでにご存知かもしれません。では、その治療に使われる「細胞」は、どのように準備され、品質が確かめられるのでしょうか。

今回は、再生医療において非常に重要でありながら、あまり注目されないかもしれない「細胞計測技術」について、その基本と重要性を分かりやすく解説いたします。

なぜ再生医療では細胞を数えることが大切なの?

再生医療では、病気や怪我で傷ついた組織を修復するために、特定の種類の細胞を移植したり、体内で細胞の働きを助けたりします。このとき、患者さんに投与する細胞の「数」は、治療効果や安全性に大きく関わってきます。

このように、細胞計測は、再生医療の研究開発から、実際に患者さんに安全で有効な治療を届けるまでのあらゆる段階で欠かせない技術なのです。

細胞を数える方法にはどんなものがあるの?

細胞を数える方法には、大きく分けて「手作業で行う方法」と「機械(装置)を使う方法」があります。

1. 手作業で行う方法(血球計算盤など)

これは、 microscope(顕微鏡)を使って細胞を直接目で見て数える方法です。最も古典的で基本的な方法の一つに、血球計算盤(けっきゅうけいさんばん)という特殊なガラス製の器具を使った方法があります。

血球計算盤には、一定の面積を持つ細かい格子が刻まれています。細胞の含まれている液体をこの計算盤の上に載せ、顕微鏡で格子の中に見える細胞の数を数えます。数えた細胞の数と、格子一つの面積、そして計算盤に乗せた液体の体積から、元の液体に含まれていた細胞の濃度(1ミリリットルあたりの細胞数など)を計算することができます。

2. 機械(装置)を使う方法(自動細胞カウンター、フローサイトメトリーなど)

最近の再生医療の研究や製造現場では、より速く、より正確に細胞を数えるために、様々な種類の自動細胞計測装置が使われています。

細胞計測の精度が再生医療の未来を支える

ご紹介したように、細胞計測の方法にはそれぞれ特徴があり、研究や製造の目的に応じて使い分けられています。どの方法を選ぶにしても、正確に細胞の数を把握することが、再生医療の信頼性と安全性を確保する上で極めて重要です。

細胞を「ただ数える」という行為は地味に聞こえるかもしれませんが、そこには高度な技術と、正確さを追求する取り組みがあります。この細胞計測技術の進歩もまた、再生医療が多くの人々に安全で効果的な治療として届くために、静かに、しかし確実に貢献しているのです。

今後、再生医療の研究が進み、より多くの種類の細胞治療が開発されるにつれて、細胞をより速く、正確に、そして細胞の様々な状態を同時に把握できるような、新しい計測技術の重要性はますます高まっていくと考えられます。

再生医療の発展は、iPS細胞やES細胞といった幹細胞技術、細胞培養技術、組織工学など、様々な最先端技術によって支えられています。今回ご紹介した細胞計測技術も、そうした基盤技術の一つとして、再生医療の未来を支えています。